5月18日(日)に東京・国立競技場で行われたセイコーゴールデングランプリ陸上2025東京。
競技自体は遅れてライブ配信を見ていただけですが、終わった後に多くの方がこの大会に関してXでコメントをされていました。
私もXで横田さんへの投稿を引用する形で投稿したのですが、無料ユーザーなのでポストがダラダラと見にくくなってしまったので、こちらにも写しておこうと思います。
※所々、加筆修正あり。
感じていることを2点。
①「ハコ」が見合っていない
例えばロンドンダイヤモンドリーグのように5-6万人の集客が確実に見込めるのであれば、それに見合うようなハコが必要だが、1-2万人の来場で5-6万収容のスタジアムだと以下のようなデメリットが生まれる。
- 見栄えとしては「ガラガラ」、密集しているが故の一体感が出ない
→単純に1/5より1/2や2/3の方が「いっぱい人が入ってるな」感が出る。人気のあるイベントという印象がつく。リピーターや翌年のコマーシャルにつながる。
- 大きなハコなりの施設使用料がかかり採算が合わなくなる
→再現性、持続可能性、発展性が乏しくなる。
- 選手が物理的に遠い
→Night of the 10000m PB’sやインドア競技会を観ていて感じたのは、観客の選手との距離はすごく大事で、これをできるだけ近づけることで、陸上競技の第一義的なエンターテインメント性(=選手のパフォーマンスを見てワクワクする)が爆上がりすると思う。
今回は世界選手権の予行的な意味合いも含めての国立開催だったかと思うが、個人的にはメインスタンドが少しあるかないかくらいの競技場に、不足分の仮設スタンドとポータブル大型映像を入れるくらいが「盛り上がる」にはちょうど良いのではないか。 (コンチネンタルツアーはWAパーミットの競技場である必要があるけど、海外の試合はいたって普通の競技場で多く行われているので、そこはなんとかなるのでは?)
②育ってきた環境・文化的な違い
これを言ったら元も子もないが、海外の競技会を色々と観て感じるのは、そもそも「観せる」大会側の違いよりも、「観る」観客側の違いで、国民性とか、バックグラウンド、受けてきた教育、というレベルで異なっているということ。
陸上をよく知らない人を巻き込むことが重要ということも真実である。その一方で陸上界を盛り上げたい熱い思いを持った関係者の皆さんが提案しているアイデアはほぼ全て「対処療法的」で、「観る」側が根本的に変わらないと、つまり「原因療法的」な対処も同時にしていかないと、どこかで頭打ちは来ると思うし、海外で展開されている「あの盛り上がっている感じ」は根本的には生まれてこないと思う。
つい最近、勤務先の生徒を連れてEnglish School Athletics Associationの地区予選大会に参加した時の話。学校対抗の陸上大会で、必ず1人2種目、しかもトラックとフィールドの両種目に出ないといけないという縛り。みんな器用にどの種目もこなすかと思いきや、本当にその時初めてやるみたいな子どもたちばかり。 フィールド種目には、砲丸投、円盤投、やり投、走高跳、走幅跳、三段跳。 ハンマー投や棒高跳をやる子どもも。みんなお世辞にも練習してきたとはいえないレベル。でもみんな一緒だからとりあえず見様見真似でやりつつ、審判をしている学校の先生たちがその都度アドバイスしている感じ。なんでもやればいいってわけではないということは思いつつ、それ以上に大事なのは、この年代のほぼ全てのティーンエイジャーがトラック&フィールドの多くの種目を見て、触れているということ。 日本だと、円盤投や三段跳なんて、陸上競技をしていないと触れ合うことはほぼない。この「ゼロ」と「イチ」の差は大きいと思っていて、大人になって、なんだか面白そうな陸上大会が開催されるとなって、「あ、そういえば子どもの頃に三段跳やったな」みたいな経験があるか、それとも全く触れ合ったことのないものの話題なのか。この差によって、会場に足を運ぶ/運ばない、興味を持って見れる/見れないの差につながると思う。これは対処療法ではどうしようもない要素であるなと。あとは、陸上競技会に限らず、「スポーツを観る場」が「社交の場」に内包されていること。 これはこういう文化・環境で育ってきたら、そうなる、っていう要素はどうしても強くて、詰まる所、もし日本のスポーツ興業を欧米に寄せていきたいのであれば、文化、国民性ベースでのアプローチが必要で、これには時間と労力がかかる(というか、かけて変えられるのか?)ということ。 やれることはまだたくさんあると思うので、自分にできることを見つけて、増やしていこう!
追記
セイコーゴールデングランプリについて、所々厳しい意見が多いようにも感じますが、それはこの大会が日本陸上界の「現在地」を表す大会だからだと思います。
もっともグレードと注目度が高く、ワールドスタンダードで他国の大会と比較できる大会。
年に一度のこの大会の価値を高めていくことが、日本陸上界全体の価値を高めることにもつながると思います。(偉そうにすみません。)
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