非公認競技会について思うこと – Brighton Track Night(記録会)レポート-

Daily Notes

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5月1日(水)にイギリスのとある陸上競技会に行ってきましたのでレポートしておきます。
カタチは記録会ですが、よく見渡すと日本のそれとは色々と異なるところが多く、学びも多かったです。
良いところは日本の競技会運営や競技会自体の在り方にも活かせると思いました。

Brighton Track Nightについて

名称:Brighton Track Night

会場Withdean Stadium, Tongdean Ln, Withdean, Brighton and Hove, Brighton BN1 5JD

場所はイギリス南端、三苫薫選手が所属するイングランド・プレミアリーグのチームBrighton & Hove Albionが拠点を置く街、ブライトンです。

試合自体はイギリスの大きな街にはだいたいあるLeisure Centre(スポーツ複合施設)のトラックで行われました。ヨーロッパらしい、メインスタンドとレーンが超近い、いい雰囲気のトラックでした。

主催・運営
この競技会のオーガナイザーはRun Baseというランニングイベント運営会社です。
競技運営は地元のクラブチームBrighton Phoenixを中心に行われています。

エントリー
Roster Athleticsというエントリーシステムからエントリーします。
このRoster Athleticsは今回のBrighton Track NightのようなOpen meeting(いわゆる「記録会」)から、ダイヤモンドリーグ、コンチネンタルツアーなどのグレードの高い競技会まで扱っています。
ダイヤモンドリーグやコンチネンタルツアーレベルの競技会がエントリーで使うことはないと思いますが、最終的な記録集計のプラットフォームとしては利用されているようです。(例:昨年のロンドンDL
日本でいうところのNANS(株式会社ニシ・スポーツ)やAthle32(マット株式会社)のような位置付けです。
イギリスやヨーロッパの陸上競技会のエントリープラットフォームは他にOpen TrackEntry4Sportsがあります。
エントリー料は1種目£8-00(約1500円)で、エントリー料の支払いもシステム上で完結します。

実施種目
100m、200m、300m、400m、800m、1500mのトラック種目のみ。シンプルです。
イギリス、ヨーロッパは300mがあるのが普通です。

学び

今回は勤務校の生徒数名を連れて出場し、エントリーから当日まで色々と見えた中で、日本の競技会と比較して学びがあった点をいくつか挙げたいと思います。

競技会の建前

この試合はOpen meeting、つまり記録会です。ただし日本で言うところの陸連登録が不要で、エントリーさえすれば誰でも出場できます。そして、扱いとしては非公認競技会になります。

後述しますが、これがさまざまな場面で大きなメリットを生み出していると感じました。

選手登録

イギリスでは学齢期から、所属は基本的に学校ではなくクラブチームになりますが、いずれかのクラブチームに登録することで、イギリスの陸上競技連盟への登録がされることになります。

今回は勤務校の生徒数名が出場しました。クラブチームには登録していないので、エントリーの際は一応学校名を入れますが、試合によっては “Unattached”(所属なし)の表記になります。
このことについて、特段困ることはありませんし、むしろ登録の手間や登録料を払わなくてもいいので、参加へハードルはかなり下がります。
もし今後、登録が必要な試合に出る機会があれば、その時に対応すれば良いですし、スケジュールの都合上限られた試合にしか出場できないので、現状で十分だと考えています。

エントリー

Roster Athleticsからのエントリーは非常に簡単な上、今大会は5月1日の試合でしたが、2日前の4月29日19:00までエントリーを受け付けてくれました。日本でも当日エントリーを受け付けてくれる競技会はありますが、オフィシャルで2日前まで受け付けてくれるところはなかなかないのではないでしょうか。

しかも!アスリートビブス(ゼッケン)は名前入りです。対応が速い。

ナンバーの下に小さくですが、名前入り。名前入りゼッケンをもらえるって地味に嬉しかったりします。

開催日と時間帯

開催日は5月1日(水)週のど真ん中の平日です。
そして時間帯は、名称の通り夜に行われます。
最初の競技100mが18:10に始まり、最終競技の1500mは21:30頃に終わります。
この時期のイギリスは日が長くなっており、21:00近くまで明るいのも、夜に実施するハードルを下げていると思います。
平日の夜に行うことで、学校終わり、仕事終わりの人が多く参加でき、また実施種目がコンパクトなので、この時間帯にぎゅっと詰め込んで実施できます。

男女混合

この競技会が非公認であるがゆえのメリットの大きな一つが、種目を男女混合で実施できることです。

現在はルール上、競技場内で行う競技では、参加人数などの条件を踏まえ、5000m以上の距離でしか男女混合での実施は認められていません(ペースメイクなどの助力は不可)。
これが非公認競技会なので、どの種目も男女混合で実施できます。
そのおかげで、競技者側からすれば、男女の別なく、同程度の競技レベル同士の選手で競技ができ、また主催者側からすれば、スタートリストを組む際も、男女を分けなくて良いので容易になります

スタート

これまでもイギリスのローカルな試合に行った際に感じていたことですが、スタートがとても自由

日本でも、小学生の大会では短距離走でもスタンディングスタートであったり、ブロックなしのクラウチングスタートであったりする光景を目にしたことがありますが、こちらは中学生くらいの年代までは上の写真のようにブロックを使わない選手が非常に多いです。

短距離走はスターティングブロックを使うのが当たり前、のような固定概念がありましたが、確かによく考えてみるとスターティングブロックを使ったクラウチングスタートは小中学生にとっては高度な技術と上半身の筋力が必要なので、小中学生年代の選手にその技術習得を目指させるのはそこまで重要ではなく、その時間を走技術や全面的な体力向上など、違う方向に割いた方が結果的に効率が良いのかもしれません。

また、ジュニア期の選手だけでなく、シニアやマスターズ(こちらは必ず”Veteran”というカテゴリがあります)の選手も普通にスタンディングやブロックなしのクラウチングでスタートしています。

ちなみに、当然ながらといっていいかもしれませんが、この競技会に腰ゼッケンはありませんでした。

運営

非公認競技会なので、競技役員の人数も最低限でした。ただし配置されるところにはしっかりと配置されていて、運営は安全かつ的確に行われていました。

タイミングと写真判定はJustimingという計測業者が入っていました。
リアルタイム速報、簡易電光掲示板、ロードレースではトランスポンダー(チップ計測)も対応してくれるそうです。

簡易LED電光掲示板とテント内で写真判定
裏はこんな感じ

設備が整っていないトラックでも写真判定に必要な機材を全て持ってきてくれて、このサイズの電光掲示板があれば立派な競技会が開催できます。

フォトグラフィサービス

イベント運営会社のRunbaseのサービスの1つに大会オフィシャルフォトを無料でダウンロードできるサービスがあります。ここから見られます。
カメラマンが何人かいて、翌日には公式結果と共に写真サイトのリンクがメールで送られてきます。
写真のクオリティもかなり高く、何より無料で自分の競技写真がダウンロードできるので、顧客満足度を上げる良いサービスだと思います。

その他

トラックをぐるぐる回っていて、走幅跳などの跳躍ピットが見当たらないなと思っていたら、第一局走路の上にありました。

トラックの外側に作らず、フィールドはサッカーピッチとしても使用でき、かつピット数を確保するための手段かと思います。スタンドから見にくいことがやや欠点ですが、こういう発想もありかと思いました。

また、当たり前のようにメインスタンドの外側に沿ってパブがありました。

やはり、イギリス人にとってスポーツは「社交の場」のようです。

まとめ

このようなカタチの競技会をいくつか見てきて、真っ先に思い浮かんだのは、EKIDEN NEWSさんが昨年4月にnoteで書かれていた以下の記事です。読んだときは軽い衝撃を受けました。

当初、私は非公認の競技会にポジティブな印象を持ってはいませんでした。
「公認にならない記録を出して何か意味あるの?」と思っていました。
ですが、この記事を読んで、また実際に自分でイギリスのこういった試合を見て、非公認だけどタイムは公認と同様にとってくれるし、運営も競技規則に縛られずにシンプルにできるし、スタートリストも柔軟に対応できるし、規定外シューズも履いて競技ができるし、メリットだらけだと感じました。

そもそもジュニア期の選手やレクリエーション目的で競技に取り組むシニア選手、また、トップ層でも状態の確認やシーズンのオープナーとして出場する選手が多数の場合、そういった選手の記録に関しては、きちんと写真判定で取ってくれれば万々歳という場合も多いかと思います。

もちろん公認で記録を残す必要性や意義も認識した上で、非公認にすることで実施や参加のハードルがかなり下がるというメリットは、人員確保等の競技運営の負担により実施のハードルが上がっている競技会が増えている現状においては、享受すべき利点なのかと思います。

雰囲気や大会としての設えなど、全てを含めたこの「ユルさ」が競技の裾野を広げ、結果として頂点が高くなっている一因なのかなと感じました。

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