筑波大学の勝 くるみ 選手が、2月から3月にかけての約1ヶ月間、イギリス・ブライトンでトレーニングキャンプを行いました。
今回はそのコーディネートをさせていただきました。
実際に私がトレーニングに顔を出せたのは数日だけだったのですが、個人的にもたくさん学ばせていただいたのでまとめておきます。
キャンプ概要
拠点

イギリスの南端、海に面する街で、多くの人が知っているところでいうと、三笘 薫 選手が所属するイングランド・プレミアリーグのクラブ、ブライトン & ホヴ アルビオン F.C.が拠点を置いています。
期間
2月15日(日)~3月11日(水)
本当はもう少し早いほうがインドアレースの選択肢もあったのですが、学期がしっかり終わってからということでこの時期になりました。
2月はまだ少し寒く、天候もよくないので、雨の中でトレーニングすることもあるかなと思っていたのですが、勝さんが来てからはよく晴れて気温も上がり春のような日が増えました。晴れ女です。
トレーニンググループ
イギリスは、いわゆる「クラブチーム文化」がありますが、クラブチーム単位で練習・トレーニングをするのは学齢期のジュニアまでで、シニアになりプロで競技を続ける選手は、そのクラブに所属は置きつつ、師事するコーチのもとで「グループ」でトレーニングを行っていることが多いです。「トレーニンググループ」と呼んでおきます。
今回は以前から交友のあったジョン・ビッグ コーチのトレーニンググループに入れていただき、約1ヶ月間、一緒にトレーニングをさせてもらいました。
左から、ジョン コーチ、ジェマ・リーキー選手、この後に出てくるダン コーチです。
もう一人、ダン コーチも基本的に一緒にトレーニングを見てくれています。
彼の所属は英国陸連で、コーチングもしていますが、メインの仕事はジュニア世代のタレント発掘と、彼らを適切なコーチと結びつけるコーディネーター的な役割をしているそうです。
グループにいる主な選手は以下の通りです。
- ジェマ・リーキー(PB: 800m 1:55.61 / 1500m 3:58.65)
https://worldathletics.org/athletes/great-britain-ni/jemma-reekie-14533469 - グレイス・ヴァンズ-アグニュー(PB: 800m 2:00.45)
https://worldathletics.org/athletes/great-britain-ni/grace-vans-agnew-14759091 - シャイキラ・キング(PB: 800m 2:00.95)
https://worldathletics.org/athletes/great-britain-ni/shaikira-king-14952642
- エリオット・ジャイルズ(PB: 800m 1:43.63 / 1500m 3:30.92)
https://worldathletics.org/athletes/great-britain-ni/elliot-giles-14457638 - カホル・ドイル(PB: 1500m 3:32.15)
https://worldathletics.org/athletes/ireland/cathal-doyle-14651495
トレーニングについて
トレーニングはフェーズにもよりますが、トラック、ヒル、トレイル、ロード、ジムをバランスよく組み合わせながら行っています。
また、エリートのみのグループと思いきや、志があるジュニアの選手などを積極的に受け入れ、一緒にトレーニングを行っています。ラン系のメニューは同じメニューを本数やスタート位置を変えてうまくやっている印象でした。
詳細は省きますが、いくつか簡単に紹介します。
トラックセッション
本数や距離を調整しながら男女・レベル問わず一緒に行うことも多いようです。
また、これは勝さんが一番感じたかもしれませんが、レップ間、セット間のレストが基本的にかなり短い。見ているだけでしんどかったです。笑
ジェマ・リーキー選手の後ろもたくさん走らせてもらいました。
ジュニアの男子たちにもうまいこと引っ張ってもらいます。
勝さんの前を走っているのは、シャイキラ・キング選手。2025年U18ヨーロッパ選手権銀メダリスト、去年と今年のイギリス室内選手権ではシニアカテゴリーで3位。弱冠17歳、走りに大物感漂う、今後要注目の選手です。すでにナイキや大手エージェンシーと契約しています。
▼キング選手のInstagramアカウント
スピードドリル(トラックセッションの一部)
週に一度は必ず「スピードドリル」を行っています。
選手たちがジョグなどのウォーミングアップ中に、まずコーチが丁寧にマーカーとミニハードルを並べるのがいつも印象的です。
その後、コーチが適宜アドバイスをし、一つ一つ高い集中度で行っていき、精度を上げていっています。
最後にはスパイクを履いて、高出力でマーク走とスプリントを行います。
「日本でよくある」と言ったら語弊があるかもしれませんが、ウォーミングアップの一環でルーティーンワーク的に行うそれとは異なり、一つの重要なメニューとして成り立っていました。
毎日のウォーミングアップに組み込むと反復効果は高いかもしれませんが、密度は薄まってしまう可能性があるということ、また、高い集中力と強度のものを時間をかけて行うので、実際は毎日はやってられないのかと思います。
スピードドリルがない日のラントレーニングの前には、選手たちはスピードドリルの中から適宜取捨選択して行っていました。
「動きづくり」や単なる「ドリル」とはまた違うもので、中長距離選手が意外と忘れがちな、純粋に「足を速くする」ことに焦点を置いたセッションだと感じました。
ヒルセッション
シーズンのフェーズによって、様々な傾斜、距離、目的で行っているとのことです。
ジョンのトレーニンググループは地面とのコンタクトにとても意識を置いています。
ヒルスプリントを行っているときに、”Listen to the footsteps. Grace and Elliot’s are big and strong. Kurumi’s are still gentle.”「足音を聞いてみな、グレイスやエリオットは大きく強い音がするだろ。くるみのはまだ優しい。」と言ってくれました。
大きい足音がするというのは、一見良いことに思えないかもしれませんが、中距離走は多少エネルギーがダダ洩れてでも、地面からより大きなエネルギーをもらうことも重要という視点もあるなと感じました。
もちろん正解はないかと思いますが、コーチとして選手を見る観点・バロメーターのようなものは必要かと思いました。私はコーチではありませんが、やはり話を聞くのは楽しいです。
ジムセッション
ジョン宅の敷地内で、息子さんたちが運営しているプライベートジムをいつも使わせてもらっています。とても贅沢な設備でした。
フリーウエイト、ダンベル、ケトルベル、チューブ、自重など様々なバリエーションがありますが、集中して短時間で行っています。





少し映り込んでいるように、私の妻や子ども、エリオット子どももジムにお邪魔させてもらっていたのですが、嫌な顔一つせず遊ばせてくれて、面倒を見てくれたりするので、本当に暖かいなと思います。
そもそも日本人的な、練習場所に家族を連れてきて遊ばせておいたり、コーチに面倒を見てもらったりするのがはばかれる、という感覚自体がないのかもしれません。
ジムに限らず、セッション中はもちろんみんな真剣ですが、トラックでも常にエリオットの子どもたちが遊んでいたり、それをみんな笑顔でかまっていたりと(それが当たり前なんでしょうが)トレーニングはいつもとても温かい雰囲気でした。
インドアレース出場
今回はトレーニングが主たる目的の遠征であったため、レースはプランに入れていなかったのですが、ちょうど期間の後半に出場できそうなインドアレースが近くにあり、インドアトラックも初めてということで、経験ということで出場しました。
大会概要
名 称:BFTTA インドアシリーズ3
日にち:3月11日(日)
会 場:リー・バレイ・アスレティクス・センター
ロンドンの北側にある施設で、昨年も別の大会で行っています。
常設のインドアトラックで、他のインドアトラックと比較してもかなり傾斜がきついそうなので、周回競技はあまり向いていないそうです。笑
結果・レース動画
女子800m
1着 2分14秒58
リザルトはこちら
3/8 BFTTAインドア・オープン🇬🇧
— Wataru SHIMAZU | 陸上@イギリス🇬🇧 (@shimapooooo) March 8, 2026
女子800m
①勝くるみ(筑波大)2:14.58
シーズン初戦🌄初インドアレース!
まさかのスタートからオープン😂 pic.twitter.com/N8rqOlaCN9
800mショートトラックはルールが改正になり、ブレイクポイントが約50m地点だったのが、400mショートトラックと同じ約150m地点に変更になりました。
それを踏まえて、レース前に6レーンでのバンク具合を確認していたのに、まさかの最初からオープンレーン。。。
高いカテゴリの試合ではないのでしょうがないかもしれませんが、バンクを上り下りする経験もさせてあげたかったと思います。残念。
経験ということで、レース内容には触れないでおきますが、ジョンは勝さんの練習を見ていて、”She is two-flat runner! (2分フラットで走れるよ!)” と言っていたので、結果を聞いた時コメントは “Ouch!”でした。それもよい経験です。
まとめ
私としては、今回のこのトレーニングキャンプのコーディネートは一つ大きな出来事でした。
約5年前にイギリスに来て、イギリスやヨーロッパの陸上競技に触れ、学び、圧倒され、それを日本にも還元したいと考えたとき、1つの手段がARの資格を取り、より多くの選手が海外での試合に出場する機会をつくることでした。
しかし、試合のアレンジだけだとどうしても単発になってしまうのと、経験から、学びを得て、そして競技力の向上に繋げるのに時間がかかるなと考えていました。
そこで、もう1つは日本の選手・コーチと、こちらの選手・コーチをつなげる役割をしたい考えていたため、今回の合宿のコーディネートはそのわかりやすい形であり、目標の一つが達成された瞬間でもありました。
ようやくスタート地点に立ったところですが、今回の合宿中にもまた新たな出会いがあったので、そこからまたネットワークを拡げて、多くの人のハブになれるように今後も頑張ろうと思えた期間でした。
そして、何といってもジョン、ダン、そしてトレーニンググループのメンバー、家族の温かさに感謝しきりのトレーニングキャンプであり、それは勝さんが一番感じたと思います。

冬の期間は半分以上は南アフリカの温かいところでトレーニングキャンプをしているそうで、今度はそっちへとお誘いをいただいたので、何が何でも行ってみたいところです。
最後に、ジェマの撮影が入っていた日に良い感じで映り込んでくれた勝選手をどうぞ。



コメント