今回は、陸上競技のルールに関してです。少し前の出来事です。
我ながら非常に細かい内容になるので、関係者のさらにごく一部しか参考にならないかもしれません。ご容赦ください。笑
まずこちらの日本陸連さんの公式Xの投稿をご覧ください。
こちらは2月にイランで行われたアジア室内陸上競技選手権の男子走幅跳の競技中の様子です。
陸上関係者であれば、この画像を見て「そうそう、そうなるよね。」と感じる方もいらっしゃるでしょうか?
ということで、今回触れたいのは「競技者に対する助力(Assistance to Athletes)」についてです。
日本陸上競技連盟競技規則(2023年4月1日修改正版)の競技規則
6. 競技者に対する助力 – 6.4 許可される助力
及び
World Athletics Technical Rules
6. Assistance to Athletes – 6.4 Assistance allowed
では以下のように規定されています。
6.4.5 フィールド種目に出場している競技者が、当該競技者に代わり競技区域(TR6.1〔注意〕参照)の外にいる者によって録画されたそれ以前の試技の映像を見ること。その録画再生機器や録画映像を競技区域内に持ち込むことは認められない。
6.4.5 Viewing by athletes competing in Field Events, of images of previous trial(s), recorded on their behalf by persons not placed in the competition area (see Note to Rule 6.1 of the Technical Rules). The viewing device or images taken from it must not be taken into the competition area beyond the immediate area in which those providing the recording are placed.
日本陸上競技連盟競技規則/競技規則・第1部 総則 及び World Athletics Technical Rules
つまり、競技会でたまに見る、フィールド種目に出場している競技者が、コーチ席にいるコーチからタブレット端末やスマートフォンで試技の映像を見せてもらいながらフィードバックを受けることは「許可される助力」ということです。
ここで問題になるのが、「その録画再生機器や録画映像を競技区域内に持ち込むことは認められない」という一文です。「競技区域(competition area)」の定義は、
「通常、柵などで物理的に仕切られている(中略)、競技が行われ、競技者と関連規則・諸規程で認められた者のみが立ち入ることのできる区域(The competition area, which normally also has a physical barrier, is defined for this purpose as the area where the competition is being staged and which has an access restricted to the competing athletes and personnel authorised in accordance with the relevant Rules and Regulations.)」
とされており、この一文があることによって、コーチがデバイスを保持したまま選手がその映像を見なければいけない、といった状況が生じます。
しかし、国際ルールがしれっと改訂されており、以下の文言が6.4.5に付され、2023年5月3日付で施行されています。
6.4.5 Viewing by athletes competing in Field Events, of images of previous trial(s), recorded on their behalf by persons not placed in the competition area (see Note to Rule 6.1 of the Technical Rules). The viewing device or images taken from it must not be taken into the competition area beyond the immediate area in which those providing the recording are placed. To ensure a better view of the images, the athlete may hold the device whilst communicating with the persons who have taken the images.
World Athletics Technical Rules
翻訳サイトにお願いすると「映像をよりよく見るために、競技者は撮影者とコミュニケーションを取りながらデバイスを持つことができる。」とのことだそうです。
改訂前のルールに忠実に従うと、選手にデバイスを持たせずにコーチがデバイスを保持したまま少し窮屈な形でフィードバックをしなければいけませんでしたが、コーチと話しながらであれば選手がデバイスを持って良いことになったので、多少やりやすくなったのかもしれません。
正直、私はトラック畑の人間なので、コーチ席でアドバイスをしたこともなければ、このルールが少し変わったことによって恩恵を受けるわけではありませんが、もしどなたかの目に触れて、競技会でのコーチングやフィードバックに幅が生まれれば嬉しいです。
ちなみに、こんな細かいことに気づいたのは、AR資格を取るために諸々勉強していた時に、自分が持っている認識と陸連のルールブックの記載は一致しているのに、World Athletics の Technical Rules の表記だけ違う。なんで?と思い、改定一覧を見たところ、2023年版のルールブック発行後にWAで改定されていたためです。
今後も細かいところにもアンテナを張っていこうと思います。
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