この夏は有り難いことに忙しくさせていただいていたので、前回の投稿に引き続き海外遠征サポートの後半です。
前半はこちら↓
丸山 優真 選手(住友電工)イギリス遠征
ヘクサム・インターナショナル・コンバインドイベント・ミーティング@イギリス
大会後に別記事にてまとめたのでこちらをご覧ください。
環太平洋大学 欧州転戦 & トレーニングキャンプ
8月13日から22日まで、環太平洋大学(IPU)陸上競技部の中距離選手5名(うち1名は30日まで)の欧州転戦 & トレーニングキャンプを、私の勤務校である立教英国学院を拠点にして受け入れました。
私の勤務校である立教英国学院はイギリスの南部に位置する全寮制の日本人学校です。
夏季休暇中、生徒は各々の自宅に帰っているので、空いている寮は各種サマープログラムなどで活用されています。
今回は初めてトレーニングキャンプを誘致しました。
敷地内に400m8レーンのオールウェザートラックを備えているため、基本的な練習は敷地内で行うことができます。
10日間の転戦&キャンプを以下に簡単にまとめます。
1戦目:ミーティング・フォー・モン

日にち:2025年8月16日(土)
会 場:AtletiekArena Gaston Roelants, ルーヴェン・ベルギー
大会カテゴリ:WAコンチネンタルツアー・チャレンジャー(D)
リザルト:こちら
1戦目まとめ
多くの日本人選手が参加した前週のIFAM Oordegem(ベルギー)に続き、こちらも各国から多くの選手が集った大会。
エントリー料がある代わりに門戸が広く、幅広いレベルの選手が出場でき、雰囲気、気候、アクセスも良いので、色々な使い方ができる大会かと思います。
全体的にはDカテゴリーにも関わらず、レベルが高い。
特に世界選手権のターゲットナンバー付近の選手たちが、1つでもランキングを上げたり、標準記録を狙ったりしに来ているのがよくわかりました。
このあたりのレベルの選手たちの詰まり方が想像以上で、どの選手も最後の駆け込みをしている必死さが伝わってきました。
IPUの学生たちは多くが初の海外遠征ということで、慣れない環境、移動疲れ、時差調整に対応しながらこの1戦目を迎えました。
メインセッション後のレースだったので、22時を過ぎるスタート時間の選手もおり、そういった意味でも慣れない戦いでした。
それぞれ及第点だったり、課題を残したりと結果は様々でしたが、全員無事に初戦を戦いました。



高嶋 荘太 選手は東京世界選手権日本代表の森 凪也 選手(ホンダ)と同レースでした。レース後には一緒にダウンジョグをさせていただきました。それもまた良い経験です。

2戦目:トゥーティング・ベック・BMC・レコードブレイカー

日にち:2025年8月20日(水)
会 場:Tooting Bec Athletics Track, ロンドン・イギリス
大会カテゴリ:WAパーミット(F)
リザルト:こちら
2戦目まとめ
2戦目はイギリスのブリティッシュ・マイラーズ・クラブ(BMC)@britishmilersclub が主催するシリーズの1大会でした。
このBMCの存在が、イギリスが中距離強国である理由の一端であることは間違いないと思います(これはそのうち絶対記事にしないとと思いつつ、まとまりきらなくてペンディング中)。
全レースに設定タイムとペースメーカー、ペースライトが付き、シーズン中はイギリス国内でこのBMCシリーズが数多く行われています。
タイムを狙うのであればイギリス国内でBMCシリーズ転戦するだけで、かなり実りあるものになると思います。
裏を返せばこの環境が自国にあるのが、中距離強国イギリスの強みです。
今大会のカテゴリー自体はFですが、選手のレベルは非常に高く、2022年オレゴン世界選手権男子1500mチャンピオンのジェイク・ワイトマン @jakeswightman や2023年ブダペスト世界選手権男子800m銅メダリストのベン・パティソン @ben.pattison をはじめ、一線級の選手たちも参加していました。

IPUの学生はベルギーのレースから中3日ということでしたが、時差ぼけもある程度解消され、ロンドンでのレースだったので移動もそこまで負担なく、1戦目よりはコンディションを整えて走ることができました。
BMCのレースはイギリスに来たからにはぜひ1本は走って欲しかったレースでした。
中距離の本場、日本ではなかなか味わえないレベルと雰囲気、中距離に特化した競技会を経験させてあげられてよかったです。
以下は男子1500m Aレースの様子ですが、レースが進むにつれ自然と人垣ができ、4レーンまで人が入ってレースを盛り上げます。
IPUの吉岡先生 @coach_yoshioka はこのレースのためだけに1泊2日のロンドン遠征に来てくださいました。(吉岡先生も思わず飛んでくるほど、魅力的な試合だったということで)


また、久しぶりにジェイク・ワイトマンに会うことができました。
レース前でもレース後でも、いつも本当にフレンドリーに話してくれます。超いい人。
この2日後にブリュッセルのダイヤモンドリーグに出場し、ベストとはなりませんでしたが、3分32秒95で走っています。
今思い返すと、イギリス選手権をコンディション不良でパスしていて、今シーズンは短いスパンでレースを重ねることがなかったので、意図的に中1日でレースを重ねるためにこのレースを走ったのかもしれません。

(この記事書いている最中に東京世界選手権男子1500mでジェイク銀メダル!おめでとう!!!)

トレーニング
前述の通り、今回は立教英国学院を拠点にした遠征とトレーニングでした。
練習は本校のトラックや近隣の公園を使って行いました。



トラックは少し古いですが、走る分には全く問題ありません。
残念ながら跳躍ピットや投擲サークルはないので、トラック練習に限られますが、もし跳躍や投てきの需要が出てきたときはすぐ近くにも別の競技場があります。
(将来的にはピットやサークルも備えたいな〜と考えています。)

また、近隣の公園(Knowle Park)も1周1kmと1.6kmが取れるちょうど良いコースがとれ、選手たちには好評でした。
この公園は私のHome parkrunの公園でもあります。

あとは、パブリックフットパスという散歩道もこの夏の時期は走るのにちょうどよく、トレイルのようなコースもいくらでも取ることができます。
物理的な練習環境もかなり整っていますが、この夏の時期に涼しい環境でトレーニングができるというのが何より大きいと思います。
陽が出ているときは日差しが日本よりも若干強く感じますが、日中でもトレーニングできる気温で、朝に至っては長袖とロングタイツがあっても良いほど、少し肌寒く感じるくらいの気候です。
そもそもどの家にも冷房はないくらい夜も涼しく、そういった気候的な環境はトレーニングで物理的な負荷をしっかりかけるという意味で非常に大事な要素だと思います。
塩見 綾乃 選手(岩谷産業)欧州転戦
塩見選手は昨年からサポートさせていただいている選手です。
日本選手権、ホクレンディスタンスチャレンジ後のワールドランキングから、もう数レース走ってうまくいけば世界選手権のターゲットナンバーに入れる可能性があるということで、8月にヨーロッパで3レースを計画しました。
1戦目:IFAM オールデヘム

日にち:2025年8月9日(土)
会 場:Putbosstadion, オールデヘム・ベルギー
大会カテゴリ:WAコンチネンタルツアー・ブロンズ(C)
結 果:
女子800m Bレース 6着 2分04秒24
全リザルトはこちら
2戦目:フリブール国際

日にち:2025年8月13日(水)
会 場:Stade universitaire de St-Léonard, フリブール・スイス
大会カテゴリ:WAコンチネンタルツアー・チャレンジャー(D)
結 果:
女子800m Aレース 4着 2分01秒01 自己新記録
全リザルトはこちら
3戦目:ミーティング・フォー・モン

日にち:2025年8月16日(土)
会 場:AtletiekArena Gaston Roelants, ルーヴェン・ベルギー
大会カテゴリ:WAコンチネンタルツアー・チャレンジャー(D)
結 果:
女子800m Bレース 8着 2分04秒99
全リザルトはこちら

転戦まとめ
2週間程度で3レースを組むシミュレーションをいくつかし、思惑通りに行かないのがまた難しいところでしたが、こちらの3レースに落ち着きました。
最終的な結果としては世界選手権には届きませんでしたが、移動・連戦となった2戦目で自己記録を更新できたのは、海外でのレースで戦う準備ができてきたということだと思います。
ただ、何回も言うようにこの辺りの記録の選手がごった返しているのが現状で、なかなか上位大会のレーンをもらうのが難しいのは今回も身に染みて感じました。
また、今まではあまり感じていませんでしたが、交渉を始めるタイミングも、早すぎても取り合ってくれませんが、日が迫ってくるとやはり不利になるとは(当然ながら)感じました。
IPUの学生を連れて行った3戦目のベルギーの試合はちょうど一緒だったので、現地でレースを観ることができました。

また、岩谷産業陸上競技部の廣瀬永和監督にも、この遠征では計画段階から色々とお世話になりました。
ありがとうございました。
平野 里歩 選手(環太平洋大学)欧州遠征延長戦 +α
3戦目:マリボル国際
日にち:2025年8月26日(火)
会 場:Atletski stadion Poljane, マリボル・スロベニア
大会カテゴリ:WAパーミット(E)
平野 里歩 選手
結 果:女子600m 2位 1分30秒02
8/26 マリボル国際(スロベニア🇸🇮)
— Wataru SHIMAZU | 嶋津 航 (@shimapooooo) September 22, 2025
WAパーミット (E)
女子600m
平野 里歩(環太平洋大学)
②1:30.02 pic.twitter.com/Vu24sXBYq8
また、縁あって大学の後輩の剱持クリア選手のサポートもさせていただきました。
剱持 クリア 選手
結 果:女子三段跳 3位 12m48
8/26 マリボル国際(スロベニア🇸🇮)
— Wataru SHIMAZU | 嶋津 航 (@shimapooooo) September 22, 2025
WAパーミット (E)
女子三段跳
剱持 クリア(Sutton & District AC )
③12m48 pic.twitter.com/qeb5vSMra9
全リザルトはこちら
大会について
世界選手権の参加資格記録有効期限が終わり、大会がめっきり減ったなか、何とか探し出して行った大会でした。
スロベニアということで、正直どこにある国かよくわからず、またアクセスも良くはなかったので、行くまでは若干億劫だったのですが、行ってみたら競技場も綺麗で、施設も整っており、雰囲気良く、ヨーロッパのこの時期にしては気温も高く、最初の印象が申し訳ないくらいに非常に良い競技会でした。
直線の風も安定して追い風が吹く事が多いそうです。

Eカテゴリではもったいないと思っていたら、来年はブロンズ(Cカテゴリ)で開催したいとディレクターが言っていたので、ぜひそうなって欲しいと思いました。

トレーニング
3戦目前後は引き続き周辺の環境を使ってトレーニングを行いました。
ジムに行ったり、フットパスを走ったり、海外の環境でトレーニングをしてみる、というのも一つ大きなテーマでした。
以下の写真は北はギルフォードという街、南は海に面した街ブライトンまで続くDowns Linkという、かつて線路だった道のフットパス(厳密には「Bridleway」)です。

この道は道幅が広く、比較的整っているのでジョグには打ってつけです。
平野選手もとても走りやすいと言っていました。
また近くのジムも利用しました。
イギリスの多くの街には「レジャーセンター」というスポーツ複合施設があり、小さなところでもトレーニングジムは備えているところが多く、大きいところだとプールやスケートリンク、陸上競技場も付帯しています。
普通にトレーニングするのには申し分ない設備です。

3戦目後にイギリスでトレーニングしている中距離選手とのセッションをいくつか組む予定だったのですが、先方の予定とコンディションの都合で今回は叶わなかったのが心残りです。また次回。
まとめ
8月は特に慌ただしく動かせていただき、あっという間に終わってしまいました。
今年は世界選手権イヤーということで、各国の選手たちも8月後半のレースには、まさに駆け込み寺のように多くの選手が集まっていることを交渉段階から、現地でレースを見るまで、多くの場面で感じました。
これらの戦いも熾烈ですが、これを勝ち抜いた人が立てる舞台が先日まで行われていた世界選手権。今回初めて現地に行きましたが、あの舞台で競技できたら、活躍できたら、そりゃ楽しいよな、と改めて納得しました。世界選手権前の多くの試合に多くの選手が世界中から、時間と労力とお金をかけて集う理由もよくよくわかりました。
本当は世界選手権前に書き終わっているはずの投稿でしたが、世界選手権が終わってから書き上げたことで腑に落ちる部分もあったので、よしとしましょう。
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