今年は、新たなスキームの大会が相次いで開催・発表されました。
- 世界陸上アルティメット選手権
- グランドスラム・トラック
- アスロス(ATHLOS)
- 世界トレッドミル選手権 など
カレンダーも複雑化すると予想されるので、整理しながらさらっておきたいと思います。
今回はまず、世界陸上アルティメット選手権について。
世界陸上アルティメット選手権
概要(第1回大会について)
正式名称:World Athletics Altimate Championship
開催日程:2026年9月11日-13日
開催場所:ブダペスト・ハンガリー
主催:World Athletics(世界陸上競技連盟)
実施種目:
<トラック>
100m, 200m, 400m, 800m, 1500m, 5000m, 100mH/110mH, 400mH, 混合4×100mR, 混合4×400mR
<フィールド>
棒高跳, 走高跳, 走幅跳, 三段跳(女子のみ), ハンマー投(男子のみ), やり投
競技実施方法:
トラック種目(一部)は2ラウンド、その他は一発決勝で行われる。
3時間のイブニングセッション×3日間
賞金:
総額1,000万ドル(約15億円)
金メダリストには150,000ドル(約2,300万円)
WRk カテゴリ:OW
その他公開済み情報
大会ウェブサイトのFAQ(よくある質問)に情報がまとまっていたのでそこから抜粋・翻訳します。
なぜ今か? – 世界クラスの陸上競技イベントに対する需要は、かつてないほど高まっています。 実際、2026年は世界選手権やオリンピックのような世界大会がない年です。 だからこそ、私たちはこの2年間、陸上競技界における革新と興奮のニーズに応えるだけでなく、それを超える新しいイベントをデザインしてきたのです。
このイベントは世界選手権の代わりになるのでしょうか? – いいえ!このイベントは、選手とファンが大切にしている素晴らしいイベントである世界選手権とは別に追加されるものです。 ファン、スポンサー、そしてアスリートは、陸上競技のショーケースとなるようなイベントを求めています。
なぜ、実施する競技としない競技があるのか? – 世界選手権は9日間に渡って13~14の種目が行われますが、アルティメット選手権は3日間、3時間のイブニングセッションが行われるだけです。 このコンパクトなフォーマットのため、世界選手権のすべての種目を含めることはできません。 各セッションでは、トラック種目、跳躍種目、投擲種目がミックスされ、スタジアム全体がアクションで賑わい、ファンにテンポの速い衝撃的な体験を提供します。
出場選手はどのように選出されるのですか? – アルティメット選手権には、最高のアスリートのみが出場します。 現役の世界チャンピオン、オリンピックチャンピオン、ダイヤモンドリーグ優勝者を含む、主要大会のタイトル保持者はすべて出場が保証されます。 残りの出場枠は、ワールドランキングによる選考システムに基づいて決定されます。
国ごとに出場選手数の上限はありますか? – アルティメット選手権には、主要大会のタイトル保持者や世界ランキング上位の選手など、最高のアスリートのみが出場します。 国籍に関係なく、ベスト・オブ・ベストの選手のみが出場できるよう、1つの国から出場する選手の数に制限はありません。
オリンピックイヤーである2028年に、アルティメット選手権はどのように機能しますか? – アルティメット選手権は、2028年のロサンゼルスオリンピックの後に開催され、シーズンを締めくくります。 今年も見られたように、2024年パリオリンピック後に開催されるダイヤモンドリーグでは、最も素晴らしいパフォーマンスが発揮されることが多いです。 アルティメット選手権は、そのようなエネルギーと興奮を捕らえ、1年を締めくくる大会となるでしょう。
選手はナショナルキットとスポンサーキットのどちらを着用して出場するのですか? – アルティメット選手権では、選手は国を代表して出場するため、ナショナルキットを着用して出場します。
所感
カレンダーへの影響
これまでは、アウトドアの世界大会は4年に一度の夏季オリンピックと2年に一度の世界選手権だったため、4年に一度は世界大会がない「空き年」がありました(下図参照)。

しかし、ここにアルティメット選手権が加わることにより、空き年がなくなり、かつオリンピックイヤーにOWカテゴリの世界大会が2つ入ってくることになります。
これは特に上位層の翌年のワールドランキングに大きく影響しそうです。
また、2025年から、世界選手権の開催を例年の8月から9月に固定し(2019ドーハと2022オレゴンが例外)、ダイヤモンドリーグファイナル→世界選手権の流れとすることで、世界選手権をアウトドアシーズンの締めくくりと位置付けるということがすでに発表されています。
これはアルティメット選手権についても同様の位置付けです。
種目間不均衡の拡大
アルティメット選手権では、大会としてのビジョンの特性上、実施されない種目もいくつかあります(特に投擲種目と混成競技)。
ワールドランキングはその種目内での相対的な基準なので、実施の有無に対する影響は少ないと思いますが、賞金獲得やその種目の認知拡大、記録水準向上のチャンスは丸々ないことになるので、実施されない種目の選手の立場になってみると、やるせなさを感じてしまうところであります。
WAの思惑
アルティメット選手権は概要をみるとダイヤモンドリーグ・ファイナルと似通っている点が多いように感じます(コンパクトな2-3日での開催、ほぼ一発決勝、アウトドアシーズンの最終盤に開催)。
シーズンのフィナーレであれば、ダイヤモンドリーグ・ファイナルで事足りるのに、なぜあえて新しい大会として創ることをしたのかを考えると、WAは自らの主催大会として持っておき、かつ陸上競技界ではかなり高額な賞金設定の大会をシーズン最終戦に設定することにより存在感を示し、ダイヤモンドリーグやコンチネンタルツアー大会との差別化、管轄大会へのガバナンスを効かせたかったのではないかと思います。
そう考えると賞金の面でも、ランキングカテゴリの面でも、ダイヤモンドリーグ・ファイナルの上位互換のように作り、シーズンのフィナーレとして毎年主催大会を設定するためにカレンダーを変更したという近年の動きの意味にも落ち着きます。
また、どこからこの財源を確保しているのかと考えるとスポンサー放映権はもちろんですが、近年ではその他ステークホルダーからの諸費用(「◯◯ Fee」なるもの)の歳入が増えているのでは?と感じます。
シューズメーカーもWA規定の審査にいくら、ARも年間登録費がいくらと、塵も積もれば山となっているのかなと。
財務諸表を見てみる必要がありますが、きっと陸上競技界でお金を循環させてくれていると信じています。
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